急に走り出した私を、不思議そうに見るお姉さん。私はそのお姉さんの方を振り返って言う。
「ごめんなさい。どうしてもやらなきゃいけない事があるの!」
「トイレ?」
「ち、違います! その、わけ...ちゃんと言えないけど」
「うん、分かったよ。行っておいで!」
夏姉は優しく微笑んで、私にそう告げた。
何も言わなくても、分かってくれるんだ。
「はい!」
それを合図に、私はかけだした。お店を出て向かう先は、家の近くの私のお気に入りの浜辺。そこにフラッチーがいる。そんな気がした。
道行く人を追い越しながら、私は走り続ける。足が重くて、息も絶え絶えになりながら、フラッチーの所を目指して。
いくらか時間が経ち限界が近づいてきた時、その浜辺へと続く小さな抜け道が見えてきた。もうすぐだ。後少し。
そしてその道を通り抜けようとした時、地面から浮き出ている気の根っこに躓いてしまった。
「うわっ!」
勢いよく躓いため体が宙に浮き、顔面から地面に突っ込みそうになる。
「とおっ」
そうなる前に手で地面を押さえて踏ん張る。けれど勢いは止まらず、私は地面を転がり滑っていった。
「あいたた。最後でドジ踏んじゃったよ」
着地した所が砂浜だったから大した怪我をせずに済んだけど、危なかったぁ。私は砂の上で大の字に寝転がり、疲労と痛みが治まるまで待つ。
すると、半透明の小さなイルカが近づいてくるのが見えた。そのイルカは私の所まで来ると、私と、私が今さっき通ってきた道を見て言う。
〝ど、どうしたのうらら!? 急に吹っ飛んできたからびっくりしたよ! 何かあったの!?〟
その声を聞くと、その顔を見ると.....急に嬉しくなってきた。
「ああ、フラッチー。やっぱりここにいたんだ」
私はゆっくりと立ち上がり、フラッチーを正面に見据える。
「フラッチー、ごめん!ごめんなさい!!」
〝え、ごめんって?なに?〟
「私が服とかジュースを買おうとした時にフラッチーが言ってた事って、私のためだったんだよね。それなのに、私、全然分からなくて、あんな態度とっちゃって。だから、ごめんなさい!」
言葉と共に、私はフラッチーに頭を下げた。
〝そっか〜、分かってくれたんだね。うん、いいよ。許してあげる。ていうか別に気にしてなかったんだけどさ。それに、あたしこそうまく伝えられなくてごめんね〟
「フラッチー……。ありがとう。じゃあこれからも一緒にいてくれるよね?」
〝当然だよ!〟
その言葉を聞いて、私は安心し砂の上にへたり込む。フラッチーがいなくなってからずっと感じていた違和感が、スッキリと無くなっていく。良かった、仲直りできて。夏姉が教えてくれたおかげだな。
〝それにしても、どうして急に分かったの?〟
一段落ついたところで、フラッチーがそんなことを聞いてきた。
「どうしてって?」
〝だって、あたしが言ってもてんで理解してくれなかったんだもん〟
少し膨れっ面で言うフラッチー。
「あー、うん。それはね、私のお母さんの妹の、夏姉が教えてくれたんだ。フラッチーが言っていたことと、似たようなことをね。その時思ったんだよ。フラッチー、この事を私に伝えようとしていたのかなって」
〝へー、そうなんだ。どんな人なの? 会ってみたい〟
「今家に来てるから、帰ったら会えるよ。だから、帰ろ。私たちのお家へ」
〝あ……。うん!〟
イラスト byえま
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