2015年2月18日水曜日

四楽章〜その6

〝何をそんなに怒ってるの?〟

「別に」
フラッチーがあんなこと言うからでしょ。どうして自覚ないのよ。
 
私の頭の中ではさっきのやりとりが繰り返される。そして余計に腹が立ってくる。どうして私の買い物の邪魔するのよ。

〝それにしてもすごかったね都会は。空気もよくなかったしさ〟

「……え、うん。まあね」

フラッチーがそうやって話しかけてきても、私は二言三言返すだけ。その後もフラッチーは色々話していたけど、鬱陶しくなった私は適当に相づちをうつだけだった。

〝すぅー、はぁー。こっちの空気の方が良いや。でもやっぱり一番は海だね!〟

バスから降りるなり、深呼吸をしてハイテンションでそう言うフラッチー。でも、今の私にはそれが腹立たしい。というより、フラッチーに苛立ちを感じる。どこかに行ってほしいと、そう思うようになっていた。でもあと少しで家に着くし、それまでの我慢だ。
 
そしてしばらく歩いた後、家までたどり着き、玄関の扉を開けた所で、顔をフラッチーの方へ向けた。

「じゃあねフラッチー」

〝え、何言ってるの?〟

「何って、もう帰るでしょ」

〝うん、だから帰って来たよ〟

 ……なんか話が噛み合ってない。
私の言う帰るを、この家に帰ると勘違いしてるのかもしれない。

「まさかまだ居るつもりなの?」
 
帰ってよ的な意味合いを含めて言ったが、フラッチーは至極当然な顔で〝そうだよ〟と答えるだけ。一緒に居たくない私にとっては、それは不愉快だった。

だから、ついカッとなって言ってしまう。

「どうしてよ! もう帰ってよ!」

〝そんなこと言われても、帰る所ないんだよね〟

「っ……! だったら」
そこでお母さんがやって来た。

「あんた、そんなとこでどうしたの?」

「な、何でもないよ。ただいま」

さっき話しかけていた言葉を引っ込め、なんとか普通を装う。

「そう。もうすぐ夕飯できるから準備しといて」

お母さんはそう言って台所の方へと戻って行った。それを見届けた後、私は口を開く。

「とにかく、もう家には来ないで」

いつまでもこうしているわけにもいかない。さっきみたいにまたお母さんが来て、不信に思われてしまう。だからとっととけりをつけよう。
 
ずっと玄関で扉を開けたまま立っていた私は、そこでようやく中に入り、荒々しく扉を閉めた。入ってくるな、と言うように。
                    * * *

目の前で扉が閉められた。これは拒絶の意だろう。あたし、うららに嫌われちゃったのかな? でも、壁をすりぬけられるから中に入れちゃうんだよね。そんなことしないけど。
 
それにしても、中々分かってもらえないなぁ。どうしてこうなっちゃったのかな、フララ……。
 
あたし達は周波数が見える。モノにある、色々な波が。自分だけじゃなくて、家族である他のイルカやクジラも。人だって、あの頃は……。

〝だめだめ、そんなネガティブになっちゃ!
あたしたちは一緒に変える…変わってゆくんだから。この世界と〟



イラスト byTaka

0 件のコメント:

コメントを投稿