私は玄関を入ってすぐ右にある客室に入り、扉をすこし開けて見張っていた。しばらくそうやっていたけど、何の変化も無い。外を確認するために部屋から出て、玄関の扉を少し開けて外を覗いてみたけど、そこにフラッチーの姿は無かった。
「ふぅ、もう行ったかな。さすがにそこまで空気が読めないわけじゃないよね」
フラッチーがどこかに行ったことに一安心し、私は自室に戻る。なんか邪魔者がいなくなったみたいですっきりするな。よく喋ってたからすごく静かに感じるし。でも、なんかちょっと落ちかない。どうしてだろう。
「と、そうだ。晩ご飯の準備しないと」
荷物を片付けて台所へ向かう。すると、お母さんが何かを揚げていた。
「お母さん、今日の晩ご飯何?」
「今海老を揚げてるところよ。あ、そこのサラダお皿に盛りつけといて」
やった、海老フライだ〜あとあおさのテンプラも!美味しいんだよね〜これ♡今日一日、ほっんと色々あったから、とにかく私はお腹がすいていた。
「はーい。えっと、お父さんの分は?」
「今日も遅くなるって言ってたわ。だから二人で先に食べちゃいましょ」
「そっか。忙しいんだね、仕事」
うちのお父さんは、よく言うサラリーマン。仕事の事とかよく分からないけど、なんか色々こき使われてそうだなぁ、お父さん。せめて心の中でエールでも送っておこう。ガンバレ! お父さん!でも、先にご飯食べちゃうんだけどね。
「「いただきます」」
食べる用意が整い、お母さんと二人で食べ始まる。しばらくサクサクいう音が聞こえていたけど、ふと、お母さんが食べるのを止めて、私を見た。
「そういやあんた、高校どうすんの? 受験勉強とかちゃんとやってるの?」
「あ、えーと……まだ決まってないんだよね、どこに行くか」
それにしても、ほんとお母さんってこういう話ばっかりだよね。毎日のように勉強しろって言われるんだから。これからもっと言われるようになるんだろうなぁ。考えたら憂鬱になる。
「そ。特にどうとか言うつもりはないけど、早いうちから決めといたほうがいいわよ。それと、今日見たいに遊びに行くのも控えなさいよ。あんたは受験生なんだから」
「うん。分かってるけど」
受験生、か。あんまり実感湧かないなぁ。
晩ご飯を食べ終わった後は、しばらくテレビを見て、部屋に戻ってきた。しょうがないから勉強でもしようと思って勉強机の前に腰掛け、鞄から夏休みの宿題用に渡された問題集を取り出す。
「はぁー。どうして休みなのに勉強しなきゃいけないのかねぇ」
そうは言っても、宿題を放棄することなんてできないし、受験の事とかを考えたら、やっぱりやらないと駄目だよね。最初が厳しいだけで、やり始めたら集中してバンバン問題解いていっちゃうんだから。そう思ってシャーペンを握った。
そして5分後。
「あーだめだ! 分からない! 何この問題。こんなの授業でやったっけ?」
開始早々、私は壁にぶち当たってしまった。最初のほうに習ったところって、けっこう忘れちゃってるのね。
「もーう!やるき出て来ないし...一休みだな。気分転換に音楽でも聴こっかな」
そう言って席を立とうとした時、机の端に置かれているラジカセを見て、ふと思い出した。
そういえば、昨日ちゃんと聴けなかったから、もう一回聴こうと思ってたんだ。BGMにちょうどいいかも。私はイアホンを耳につけ、ラジカセの再生ボタンを押す。昨日と同じようにノイズが流れた後、ゆっくりとした、甲高い音が聞こえてくる。気持ちいい音だなぁ。なんか寝てしまいそうなる。
「だめだめ、ちゃんと勉強しないと」
私は自分の頬を軽く叩いて眠気を飛ばし、シャーペンを握り直した。そしてそのまま、机に伏せて瞳を閉じた。
イラスト byえま
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