頭の中で考えていても何も分からない。
なので私は、とりあえず.....
分からない事を一つずつ、
この変なイキモノに聞いてみることにした。
「まず、あなたは何ですか?」
〝そんな改まって話さなくてもいいじゃん〜楽しくいこうよ〜〟
なんか、ハイテンションなイルカだなぁ。
ちゃんと質問に答えてくれるだろうか。
「えっと、じゃあ、あなたは何?」
〝イルカだよ!〟
ばっちりとウインクを決め、
誇らしげにそう言われた。
「いや、それは見れば分かるから!もっとこうほら、何で浮いてるのかとか体が透けてるのか
とか! そういうことを聞いたんだよ私は!」
しまった。
また冷静さを失ってしまった。
落ち着け、私。
深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、
それまで待ってくれていたイルカが、
その続きを話し始めた。
〝なんだ、そういうことか。それはね、あたしが魂だからだよ〟
「タ、タマシイ?」
〝そう、魂。だから体が透けてるし、こんな風に宙に浮いてられるんだよ。ぶっちゃけると幽霊だね〟
幽霊.....
たしかにそれなら納得がいく。
いや、でもなんでイルカの幽霊がこんな所にでるんだろう。
ここでイルカが亡くなったりしたのかな。
と、そこで今朝読んだ新聞を思い出した。ここにイルカが打ち上げられたことを。そして、理由は分からないが、その場所に行きたいと思いここにはずだ。この謎生命体、いや、魂となってしまったイルカのインパクトが強すぎて、そのことを忘れてしまっていたようだ。だったら、あのイルカは……。
「昨日ここに打ち上げられたイルカって、あなたなの?」
〝うん。ちょっと群れから外れて泳いでいたんだけど、猛スピードでやってきた船とぶつかっちゃったんだ。それで泳ぐ力を失くしちゃって、ここまで流されてきたの〟
「そんな! この辺りは速度制限されてるのに!」
〝ううん。あたしが船とぶつかったのは、この島から北の方に少し離れた所なんだ。普段なら全然避けられた。でも、そこは人工的な雑音が多くてね。船自体も騒音になるし、人間が使う探知機とかも多くて。そのせいで音を聞き取ることが困難で、船の存在に気付けなかったんだ〟
「そんなことが……」
そういえば、今朝の夢で音を使って海を見ているって言ってたな。つまり、雑音のせいで周囲
の様子をちゃんと見ることができなかったんだ。そんな状況になってしまっている所があるのか。
「ねえ。あなたは、死んじゃったんでしょ?」
〝そうだね。まぁ、人間的世界常識でいうとね。それがどうかしたの?〟
「その、悲しくないの? 私は、どうしてか分からないけど、とても悲しくなってしまったの。まるで、家族が亡くなったみたいで……」
さっきの話を聞いて、あの悲しさが戻ってきたのだ。
〝あたしは悲しくなんかないよ。悲惨な目にはあったけど、おかげでこうして君と出会うことができたんだから。それと、君が悲しくなるのは当然のことかもね。だって、あたしたちは家族なんだから。そのこと、忘れてしまってるだろうけどさ〟
なんだか信じられないことを言っているけど、何故か、それに納得してしまった。
あと、私と会ったことが彼女にとって喜ばしい...
そう言われたことが、ちょっぴり嬉しかった。
イラスト byアオイ
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