「なるほど。あなたのことはだいたい分かった。
でも、幽霊なんでしょ? どうして私、見えてるの?」
〝うーん、見える人には見えるんだよ。多分〟
多分って、そんな適当な。
でも私に見えるって、なんで?もしかして霊感があるの?
うそだ〜今までなんにも見えたことないのに。
〝ところで、フララはどの辺りに住んでるの?〟
「えっと、この島の北東の方だけど。
それがどうかしたの?」
と、反射的に答えてしまったけど。
今、このイルカさん.....
私のことフララって呼ばなかった?
〝もうすぐ正午になるけど、君たちはこの時間になったらご飯を食べるでしょ? フララは家に帰らなくて大丈夫なのかなーって思って〟
やっぱりそうだ。
もしかして、誰かと間違えてるんだろうか。
「あの、私、フララじゃなくて、うららなんだけど」
〝ん? あーそっか。今はそう言う名前なんだったね。ごめんごめん〟
「え? それ、どういうこと?」
〝いやいや、気にしないで。それよりも、時間大丈夫なの?〟
そう言われると気になってしまう。
携帯で時間を確認してみると、12時まであと5分だった。
そういえば、なんでこのイルカは時間が分かったんだろうか。さっきの発言といい、謎が多すぎる。いや、そんなことよりお昼ご飯だ。お腹すいた.....
鞄から財布を取り出して中を確認してみる。
帰りのバス代を考えると、お金足りない。
何も賈えなさそうだ。
というか、お店なんて周りに無いけど。
だとしたら、家に帰らなきゃ。
「そろそろ帰った方がいいかも。お腹も減ったし」
〝そっか、じゃあ帰っちゃうんだね……〟
「うん。それでさ、あなたは名前、あるのかな?」
〝うーんとねー。フラッチー。皆からそう呼ばれてたよ〟
「じゃあ、私もそう呼んでいいかな?」
〝もちろん!〟
今までで一番良い笑顔で、そう答えてくれた。
「うん、ありがとう。それじゃ、バイバイ、フラッチー」
フラッチーに手を振り、私は海を背に歩き出した。
また会いに来よう。そう思いながら。
「あの.....。何でついて来てるの?」
私は、さっきから後ろで物珍しそうに周りを見回している、イルカの幽霊、通称「フラッチー」にそう問いかけた。
〝ん? なんか面白そうだと思って〟
「さっき、別れのあいさつ言ったのに……」
なんとか道無き道を通って道路に出、そしてバス停までやって来た。やって来たのだが、何故かフラッチーもここまでついて来たのだ。最初は見送りに来てくれているのだと思っていたが、そんな雰囲気ではなさそうだった。だから、何か用事でもあるのかと思ったのに、面白そうって……。
「まあ、別にいいけどさ。家までついて来ることはないでしょ?」
〝おお、それいいね!そうしよう!〟
しまった。余計なことを言ってしまったかもしれない。
「それ、本気で言ってないよね?」
〝うららの家、どんな所だろうなぁ〟
このイルカ、本当に来るつもりだ。
あの発言がいけなかったか……。でも、少しくらいいいかな。
しばらくするとバスがやって来たので、私はそれに乗り込んだ。
フラッチーはどうするんだろうと思って見ていると、壁をすり抜けて入って来た。他の人が驚いたりしてない、やはり私以外の人には見えていないようだ。
〝バスに乗るなんて、初めてだよ!
なんかすごいなぁ!〟
普通イルカがバスなんかに乗らないでしょ、と思ったけど、フラッチーに関しては存在自体が普通じゃないので、口にするのは止めておいた。
向こうに着くまでに30分はかかるし、
色々と疲れたので少し寝ることにした。
バスを降りた後、隣ではしゃいでるフラッチーを適当にあしらいながら、帰路についた。
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