2014年12月3日水曜日

三楽章〜その4

頭の中で考えていても何も分からない。
なので私は、とりあえず.....

分からない事を一つずつ、
この変なイキモノに聞いてみることにした。

「まず、あなたは何ですか?」

〝そんな改まって話さなくてもいいじゃん〜楽しくいこうよ〜〟

なんか、ハイテンションなイルカだなぁ。
ちゃんと質問に答えてくれるだろうか。

「えっと、じゃあ、あなたは何?」

〝イルカだよ!〟

ばっちりとウインクを決め、
誇らしげにそう言われた。

「いや、それは見れば分かるから!もっとこうほら、何で浮いてるのかとか体が透けてるのか
 とか! そういうことを聞いたんだよ私は!」

しまった。
また冷静さを失ってしまった。

落ち着け、私。

深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、
それまで待ってくれていたイルカが、
その続きを話し始めた。

〝なんだ、そういうことか。それはね、あたしが魂だからだよ〟

「タ、タマシイ?」

〝そう、魂。だから体が透けてるし、こんな風に宙に浮いてられるんだよ。ぶっちゃけると幽霊だね〟

 幽霊.....

たしかにそれなら納得がいく。

いや、でもなんでイルカの幽霊がこんな所にでるんだろう。
ここでイルカが亡くなったりしたのかな。

と、そこで今朝読んだ新聞を思い出した。ここにイルカが打ち上げられたことを。そして、理由は分からないが、その場所に行きたいと思いここにはずだ。この謎生命体、いや、魂となってしまったイルカのインパクトが強すぎて、そのことを忘れてしまっていたようだ。だったら、あのイルカは……。

「昨日ここに打ち上げられたイルカって、あなたなの?」

〝うん。ちょっと群れから外れて泳いでいたんだけど、猛スピードでやってきた船とぶつかっちゃったんだ。それで泳ぐ力を失くしちゃって、ここまで流されてきたの〟

「そんな! この辺りは速度制限されてるのに!」

〝ううん。あたしが船とぶつかったのは、この島から北の方に少し離れた所なんだ。普段なら全然避けられた。でも、そこは人工的な雑音が多くてね。船自体も騒音になるし、人間が使う探知機とかも多くて。そのせいで音を聞き取ることが困難で、船の存在に気付けなかったんだ〟

「そんなことが……」

 そういえば、今朝の夢で音を使って海を見ているって言ってたな。つまり、雑音のせいで周囲
の様子をちゃんと見ることができなかったんだ。そんな状況になってしまっている所があるのか。 

「ねえ。あなたは、死んじゃったんでしょ?」

〝そうだね。まぁ、人間的世界常識でいうとね。それがどうかしたの?〟

「その、悲しくないの? 私は、どうしてか分からないけど、とても悲しくなってしまったの。まるで、家族が亡くなったみたいで……」

 さっきの話を聞いて、あの悲しさが戻ってきたのだ。

〝あたしは悲しくなんかないよ。悲惨な目にはあったけど、おかげでこうして君と出会うことができたんだから。それと、君が悲しくなるのは当然のことかもね。だって、あたしたちは家族なんだから。そのこと、忘れてしまってるだろうけどさ〟

なんだか信じられないことを言っているけど、何故か、それに納得してしまった。

あと、私と会ったことが彼女にとって喜ばしい...

そう言われたことが、ちょっぴり嬉しかった。


イラスト byアオイ

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