2015年1月14日水曜日

四楽章〜その2

〝ん? メール? もしかして彼氏!?〟


私がメールの内容を見ていると、フラッチーが画面を覗き込んできた。
相変わらず興味津々である。


「違うよ。私彼氏とかいないし。友達から、遊ぼうって」


〝今から?〟


「そうだね。すぐに支度しないと」


私は一度仕舞った鞄を取り出して、出掛ける準備を始めた。
貯金箱からいくらかお金を取り出して財布に入れる。


〝さっき帰ってきたのに、もう出て行っちゃうんだ。忙しいんだね〟


「今日はたまたまだよ。それに、家にいても暇だしさ」


髪や服装を整え、準備万端。お母さんに遊びにいくと伝え、玄関に向かう。「また出掛けるの?」と小言を言われたが、気にせずに歩き出した。反抗期じゃないよ。


「で、やっぱりついてくるんだ」


準備をしている時からずっと追いかけてきていたから、なんとなく予想はついていたけど。


〝そりゃだって、面白そうなんだもん!〟


相変わらず、フラッチーは「面白い」が決め手だ。
きっと彼女はそれをモットーに生きてるんだよ。

……生きてなかった。


「ついてくるのはいいけどさ、友達の前では話しかけてこないでね。変に思われるから」


〝オーケーあたしに任せなさい!〟


「う、うん。ありがと」


なんか不安だけどなぁ……。


そうこうしている内にバスがやってきたので、私とフラッチーはそれに乗り込んだ。本日三度目だ。バス代も安くないんだけどなぁ〜 と、下がりかけたテンションを戻すため、遊ぶ事だけを考える。

この島は南東の地域が一番発展していて、デパートや映画館があったりする。学生達は皆、そこに遊びに行くのだ。久しぶりだし、新しい服とか買っちゃおっかな。

ちなみにフラッチーはというと、窓から移り行く景色を眺めていた。電車の中で椅子に膝立ちして、外の景色に釘付けになる子供のようだっだ。


〝うわーすごい! 人がいっぱいだ!〟


バスを降り、目の前に広がる人の群衆を見たフラッチーが驚いていた。


「そりゃ島内一の都会なんだから、人はたくさんいるよ」


〝うーん、魚の群れもすごいけど、やっぱり大きさが全然違うから、スケールがすごいなぁ〟


「そんな、魚と一緒にされても……」


ていうか、私からすれば魚の群れの方がすごいだけどなぁ。


〝それにしても、うららの住んでる所とは全然違うなぁ。都会と田舎の差って、思ってた以上だよ〟


「悪かったね田舎で」
 
田舎にだって良い所はあるんだから! 例えばほら! 緑が多いとか! 空気が綺麗とか!自然が豊かとか!


〝いや、田舎が悪いって言ってるわけじゃないんだ。むしろこっちの方が……〟
 

途中からは独り言のようで、よく聞こえなかった。
 

そうやって歩いていると、目的地のデパートにたどり着く。待ち合わせ場所は、デパートの前の広場。その中央の噴水の所だが、まだ私しか来てないようだ。
 
私は近くのベンチに腰掛け、友達が来るのを待つ事にした。


〝ねえ、うららの友達ってどんな子? 何人来るの?〟


「今日一緒に遊ぶのは二人だよ。一人はかんなって言って、活発な明るい子。もう一人は香澄。控えめで、清楚な感じかな。二人とも、学校でもよく一緒にいるんだ」


〝仲の良い友達なんだね〟


「うん。早く来ないかなー」


うきうきした気分で人混みを眺めていると、
見知った顔が二つ、歩いているのが見えた。


「あ、来た!」


私が手を振ると、それに気付いた二人も手を振りながら、私のそばまでやってきた。

かんなは派手な色合いのTシャツにデニムのホットパンツ。髪はいつものように後ろで一つにまとめ、動きやすそうな格好をしている。


香澄の方は、白いサマードレスに黒のミュールと、涼しそうな服装だ。麦わら帽子をかぶって浜辺に佇んでいると、とても絵になりそう。


〝うーん、中々のべっぴんさんだねぇ。やっぱり若い娘はええ〟


二人の姿を見たフラッチーが、おっさんみたいなことを言っていた。


 「よっ、うらら」

「こんにちはうららちゃん」

「うん。じゃ揃ったし行こっか」


いつものように挨拶を交わし、談笑をしながらデパートの中に入っていく。

ああ、なんか日常に戻った感じ。




イラスト byTaka

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