2014年11月12日水曜日

三楽章〜その2


さすがに音を聞いているのにも飽きてきたし、お腹も空いたので、着替えて洗面所で顔を洗ったりしてから食卓に向かった。


テーブルの上に用意されてる朝ご飯を見て、私は少し驚いた。デザートにマンゴーが付いてる!
南の方に位置するこの島でもあまり食べられないマンゴーが♡♡♡
「マンゴー! どうしたのこれ!?」
興奮気味に、お母さんにそう訪ねた。
だってほら、マンゴーだもん。
そりゃテンション上がっちゃいますよ。
「さっきいただいたのよ。ほら、お向かいの農園で旦那さん、マンゴーの栽培してるでしょ」
お母さんもマンゴーのこと、嬉しそうにそう答えた。
「そう言えば毎年貰ってたね。それでさっき来てたんだ」
「何かお返しないと。あんたもお礼言っときなさいよ」
「はーい」


そして「いただきます」といってからご飯を食べ始めた。 
隣に新聞が置いてあったので、適当に目を通していた。途中でイルカという単語が見え、それに引き付けられて記事を読んでみた。


その内容は、昨日、浜辺にイルカが打ち上げられて亡くなった、というものだった。さらにそれは、この島で起きた出来事だという。 
驚きだった。
イルカが打ち上げられたということもそうだが、それ以上に、それがこの島で起きたということにとても驚いた。 
この島はクジラの保護にかなり力を入れている。
船の移動速度を低く制限したり、クジラを傷つけるような事は一切禁止されている。イルカが打ち上げられたのは前にも何度かあった。
でもそれが死に至ったのは今回が初めてだったのだ。 私は悲しさを感じ、食欲も無くなってきた。さっきまで美味しく食べていたご飯が不味く感じる。
でも、何でこんなに悲しいんだろう。
まるで家族が亡くなったように感じてしまう・・・


そんな気持ちは癒えなかったけれど、とりあえず食事を済まし、食器を片付けて早々に部屋に戻った。
そのままベッドに倒れ込み、ぼーっとしていた。
本当に、何でこんなに悲しいんだろう。 
そこでふと、そのイルカが打ち上げられた所に行ってみたいと思った。ただ衝動的にそう思っただけだが、私はすぐに出かける準備をしていた。


「ちょっと出かけてくる〜」 
お母さんにそう言ってさっさと家を出て、私は近くのバス停まで走っていった。目的地は島の一番南にある浜辺だが、この島はあまり広くないからバスを使えば30分くらいで行ける。なんの根拠もないけれど、私はそこに行かなければならないような気がして、とにかくやってきたバスに気ぜわしく乗りこんだ。 


島の南の浜辺に一番近いバス停まで行き、そこからしばらく歩いた。そして、あのニュースが告げていたイルカが打ち上げられたという場所に、私はたどり着いていた。

そうして夏休みの 二日目は始まった。




イラスト byアオイ


0 件のコメント:

コメントを投稿