2015年3月11日水曜日

五楽章〜その2

 気が付くと、私はコンビニの中、入り口の所に立っていた。

家から少し離れたところにある、よく行くコンビニだ。あれ、でもどうしてこんな所にいるんだろう? 何か買いに来たんだろうけど、何だっけ?

とりあえず店内を見回ることにする。そうすることで何を買いに来たのかを思い出すかもしれない。そう思って一歩踏み出そうとした時、何か、異質さに気付く。なんだろう。いつもと雰囲気が違う。いつも通りに陳列されている商品から、どす黒いオーラのようなものが感じられる。いや、それだけじゃない。この空間自体が、毒々しい空気で満たされている。それは、私を拒んでいるようで、私はそれに恐怖を覚えた。不快なんてものじゃない。吐き気はするし頭痛はひどいし、おかしくなってしまいそうだ。
 
ここにいたら危険だ。本能でそう察知した私は、すぐにそこから逃げ出した。

 
鳥の唄と、朝の日差しの眩しさで私は目を覚ました。

うーん、なんて幻想的な起き方なんだろう。これでちゃんとベッドで寝てたら最高なんだけどなぁ。視界に映るのは、まだ少ししか手が付けられていない問題集に、お気に入りのシャーペン。少し奥にラジカセが置かれている。

「はぁー。また途中で寝ちゃったよ」

それにしても、今日は奇妙な夢を見たなぁ。何だったのかなぁ、あの変なコンビニは。もうとにかく気持ち悪かった。夢のことだから気にすることないかもしれないけど、それにしても変な夢だった。

「う、思い出したら気分が……。顔洗って来よう」

寝違えたせいで首も痛い。あー何かテンションの下がる朝だよ。私はげんなりしながら洗面所に向かう。階段を下りたところで、お父さんに遭遇した。なんか久しぶりに見た気がする...って、たぶん二日振りくらい?けど、この数日...二日とかいう感覚じゃない時間が経っている気がする。

「おはよう、お父さん」

「おう、うららか。ってどうした? 元気ないぞ」

私のだるーっとした様子と覇気のない口調から、お父さんが心配したように聞いてくる。

「ちょっと変な夢見たせいで調子悪くて。大丈夫だよ。すぐ直るから」

「そうか。じゃあお父さんちょっと出掛けてくるよ」

「え、何今日も仕事?」

「休日に仕事とか勘弁してくれ。母さんの妹さんを迎えに行くんだよ」

そう言ってお父さんは家を出て行った。
それを見届けた私は顔を洗いに行く。

お母さんの妹さんか。確か結婚するからって親戚にあいさつに回ってるんだっけ。私、あの人ちょっと苦手なんだよね。

顔を洗ってスッキリすると、気分も和らいできた。そのまま朝食も済ませて部屋に戻る。今日もまたマンゴーが食べられて幸せ。そのおかげでもうへいきへっちゃら、元気になった!

しかし、何か変だ。

何かが足りない気がする。それは、昨日家に帰ってきてからずっと感じていたこと。ちょうど、フラッチーと分かれてから....え?フラッチー??

「いやいやそんなことない。むしろせいせいしてるんだから。きっと気のせいだ」

そうやって、彼女のことは考えないようにする。うん。今は考えたくない。

そのままベッドに倒れ込んで何も考えずぼーっとしていると、車のエンジン音が聞こえてきた。今もなお鳴り響く鳥の唄に混ざって聞こえてくるその音は、私を不快な気分にさせる。

「お出迎えしないと」

私は気持ちを切り替え、お母さんの妹、私にとっては親戚のおばさんを迎え入れるために、一階へと階段を下りて行った。




イラスト byえま

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