驚いて振り返ってみると、
さっきまで海を見ていたその男の人が私の方を向き、
そう言葉を掛けた。
さっきまで海を見ていたその男の人が私の方を向き、
そう言葉を掛けた。
この人、私に話しかけたの?
こっち見てるし、他に人はいないし…そうだよね。
なら、返事した方がいいかな。
けど、なんか怪しそう。
あんまり関わりたくないし、夏休み初日の朝は完璧に楽しく始めたい!
ってか、間違えて学校行こうとしたんだっけ。
ってか、間違えて学校行こうとしたんだっけ。
なんて、一人で頭の中グルグルしていると、
「君はよくここにクジラに会いに来てるでしょ?」
また、その人がそう話しかけた。
「は、は、はいっ!」
さすがに私に話しかけているんだとわかり、慌てて返事した。
ん?
なんでこの人、私が良くここに来ていること知っているんだろう。
前に会ったことあったっけ?
そう思い、その人の顔をまじまじと眺めて見た。
髭があって、日に焼けて真っ黒な顔。
日本の人かな?日本語喋っているけど…
どこの国の人かわからないような、不思議な顔立ちだ。
ううん、やっぱり会ったことなさそう。
知らない人だ。
「クジラの歌を、聞いた?」
また話しかけてくる。
「歌?…えっと、き、聞いたこと、無いです」
なによ、歌って。
クジラの姿を見かけても、歌なんて聞こえるワケ無いじゃん。
変な人、関わらないでもうさっさと帰ろう。
「そうか。じゃ…」
男の人はニッコリ笑いながら、私に歩み寄って来た。
「歌、聞かせてあげるよ。」
ひえ〜っどうしよう!
逃げる?逃げた方がいいんじゃない?
けれど、この人の笑った顔…
なんだかとっても懐かしい。
今日はどうしてこんなに妙な朝なんだろう。
目覚めた時から…ううん。
目覚める前から変だった。
目覚める前から変だった。
明け方、おかしな夢を見たんだ。
あの、妙な夢。
その夢の中では、私はクジラになっていて、海を泳いでいた。
遠くの方に船が見えたからあいさつをしようと近づいていった。
その船に乗っていた一人の男が、私を指差しながらさわぎはじめた。
すると数人の男が外に出てきた。
気がつけば私の辺りを数隻の船が囲んでいた。
まずい!そう思ってもぐろうとすると、何かが自分の体に刺さった。
そこでアラームが鳴って、私は目が覚めたんだった。
あの夢、ちょっと怖かった。
私の目の前までやってきた男の人は、
背負っていたかばんを降ろし、中を探りはじめた。
気になって少しのぞいてみた。
衣服や食器などの生活用品の他、笛やら貝殻やら石ころやら…
変わったものがたくさん詰め込まれていた。
これ背負って歩いてるのかな?
大変そう。
なんてことを考えていると、目的のものが見つかったようで、
かばんの中から何かを取り出した。
それは手におさまるほどの少し厚みのある長方形の黒い物体だった。
小さな穴が二つ空いていた。
「なんですか?それ」
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