2014年11月5日水曜日

三楽章〜その1


ボクタチハ、ヒビキアッテイルンダ.....


スベテノオトハ、ヒビキアッテルンダ.....


ヒビキアッテ..........



翌朝、朝日に照らされて私は目を覚ました。


んーっと伸びをして、自分が横になっているのではなく、何かに座っていることに気付く。目の前には勉強机があり、涎が少し垂れていた。どうやら何かの作業中に寝落ちしてしまったらしい。 何をしていたのか思い出そうと机の上を見ると、ラジカセとそれに繋がれたイアホンが置いてあった。

そっか、クジラの唄を聴いてたんだった。


途中で寝ちゃったからあんまり覚えてないなぁ。


後でもう一度聴こうか。



そういえば、今日もまた、クジラが出てくる夢を見た。


でも、昨日のような怖い夢じゃなくて、イルカがクジラのことを色々と教えてくれる、そんな夢だった。本当に夢だったのかな。でも、イルカがしゃべってたんだから...きっと夢だよね。

そのわりには、話してた内容がすごいリアルだったんだ。


なんかクジラのことについてすっごい詳しく話してて。でも面白かったし、あれが全部本当なら、すごい力を持ってるんだなぁ、クジラって。何ヶ月もご飯を食べないで過ごすなんて考えられない。あんなに深く、長くなんて潜れないし、陸ですら人間の力だけじゃ全然速く移動できないのに、水中をそんなに速く泳げるなんて。ちょっと羨ましいな。


でも、クジラやイルカは陸では暮らせないもんね。


やっぱり海と陸の世界は違うんだ。


ま、あたりまえだよね。あたりまえだけど、あんまりその違いを考えた事なかったかもしれない。


夢の最後の方では、たしか音について色々言ってたけど.....目じゃなくて耳で、ううん、音で?そう、たしか音を使って世界を見るって言ってた。

それはどんな感じなんだろう。想像つかないな。

私は試しに目を瞑ってみた。


視界が真っ暗になって何も見えない。その代わりに、耳を澄ませて周りの音をよく聴いてみた。鳥のさえずりが絶えること無く聞こえてくる。いろんな方向から、聞こえてくる。音色も大きさも様々だ。下からはテレビの音がわずかに聞こえてきた。お母さんがいつものドラマを見ているんだろう。あ、インターホンが鳴った。足音が聞こえる。お母さんが玄関に向かってるんだな。ドアを開ける音、割と大きな話し声。これは近所のおばさんかな。

そうやって聴いていると、いろんな音が聞こえてきて、楽しくなってきた。


そうなんだ〜音だけでも、こんなに色んなことが分かるなんて。

しばらくの間、私はそうやって音に耳を傾けて楽しんでいた。





イラスト byアオイ

0 件のコメント:

コメントを投稿