彼らが冬に赤道に近い海で過ごす理由は、
子育てのためだ。その辺りの海は穏やかで、
子供を育てるのに適してるんだ。
波が荒いと、産まれたばかりのまだちゃんと
呼吸が出来ない子クジラに、
彼ら独自の呼吸の仕方を教えるのは難しいんだ。
穏やかな海の浅瀬なら、シャチに教われる心配もないしね。海での暮らし方をしっかり覚えて
成熟するまでの間は二〜五年間くらい。
彼らは君たち人よりも早く自立してゆくのさ。
そうやって彼らは長い距離を回遊しながら生きている。けれども、このことについて、
人はまだ色々なことを解明出来ないでいる。
例えば、とっくにお産や子育てを終えて
もう年老いておじい・おばあとなった クジラも
一緒に回遊するその理由さえ、明確にされていない。
そして、彼らは海の中ならいろんなところへ
自由に行くことができる。
でも、そんな彼らでも、
赤道を越えることはできないんだ。
例外はあるけれど、ほとんどのクジラは
赤道の海の熱さには対応できない。
だから同じクジラでも北半球と南半球とで
分かれてしまっているんだ。最初にクジラはオキアミを食べているといったけど、
すべてのクジラがそれを主食としているわけではないんだよ。
クジラは、大きく二種類に分かれている。
一つはハクジラ・・・僕たちイルカもその仲間さ・・・で、もう一つはヒゲクジラ。まあ、これは人間がそういう風に区別しているだけだけど。ハクジラは口の中に鋭い歯を持っていて、
魚や深海に棲むイカなどを主食にしている。
また、シャチのように獰猛なものは、
クジラやアザラシなどを襲う物もいるんだ。
けっこう攻撃的だけど、大きさはヒゲクジラよりも小さめなのさ。
ヒゲクジラは歯の代わりに鯨鬚という器官が
上の顎から生えているんだ。これは髭のような物を束ねて板状になったもので、
主食であるオキアミや小魚などの小さな生き物を
濾しとるために使われている便利なものさ。これがハクジラとヒゲクジラの主な違いで、
他にもいろいろ違いがあってもっと細かく分類できる。
だけど、僕らにしてみればどれも同じクジラなんだから、
わざわざそんな面倒なことをしないで
クジラはクジラでいいじゃないかと思うんだ。
何度も言うように、人はすぐに”違い”で
区別しようとするからね。
違う所を探すよりも同じ所を見つける方が
いいと思うんだけど。
というよりも・・・「違い」と「同じ」に分けるっていうこと自体が、
とても不思議なことなのさ。
僕らにとっては、ね。
イラスト by92
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