2014年10月17日金曜日

二楽章〜その4♪

光の届かない海の底は、 
だんだん暗くグラデーションを描く。 
海の中は視界が悪く、 
目はあまり役に立たないんだよ。


君たちは、周りの様子を目で見て 
認識しているだろう。
目で見て自分が今どこにいるのかを 
認識することができるし、 
遠くの方を見渡すこともできる。 
君たちにとってそれは当たり前のことで、 
陸で暮らすのならそれで問題ないさ。 
でも、海の中では視界が悪く 
遠くの方を見渡したりできないし、 
どこを見渡しても一面の青、または黒で、 
自分がどこにいるのかを 
認識することができないんだ。 
  
目で見て情報を得ることができない。 
だから僕たちは耳を使って 
海の中の様子を見ているのさ。 
視覚的に見ているのではなく、 
聴覚的に見ているんだよ。 
僕たちの耳はとても発達していて、 
海の中の音をよく聴き取ることがことができる。 
さらに、水中だと音の速度は
気中のなんと4倍になる。 
この性質を活かし、 
音を使って海の中を見ているのさ。
 

どうやって音を使って見るかについてだけど、 
僕たちが音を出して 
唄ったりしているのはしってるよね。 
その出した音が広がっていき、 
海底の岩や他の生き物にぶつかって跳ね返ってくる。 
その跳ね返ってきた音を聴いて、 
どこに何があるのか、

また、自分が今どこにいるのか 
というのを、調べるのさ。

これを人はソナーと呼んでいるよ。
 
周りの様子を調べること以外にも、 
コミュニケーションの手段として 
僕たちは音を使っている。

広い海の中で遠くにいる仲間に 
いろんな情報を伝えるために、 
海の隅々にまで響き渡るような唄を唄う。

実際、どこまで音が 
響いているのかは知らないけれど、

1000㎞以上離れているクジラの居場所を、 
音を使って突き止めた人間がいる。

海全体とまではいかなくとも、 
一つの海洋くらいなら音は届くだろう。

だからどこにいても仲間の声が聞こえ、 
海の中での音を使ったコミュニケーションができるのさ。

ま、僕のような小さなイルカじゃ 
そこまでの音は出せないけどね。
 
クジラの唄というと、ザトウクジラの唄が 
君たちの間では有名なんじゃないだろうか。

彼らの唄は綺麗で複雑だから 
人間たちに親しまれるのだろうね。

それに、彼らが一番積極的に 
君たちに唄を届けようとしているから。




そして、もちろん僕らは沢山の音を聞いている。

海の中は、深い深い交響楽の世界なんだ。

どんなささいな音も海の中を泳ぎ、 
反響し影響し合う。

僕らはそれを聞き、そして感じ取る。

ひとつ残らず、すべての音を。

今、海の中で何が起こっているのか・・・ 
すべてを感じ合っているんだよ。

これは、本来、君たちも同じことなのさ。

空中に飛び交う音…その共鳴で、 
世界は描かれているんだ。

 ま、とりあえず。 
こんな感じでクジラのこと、 
分かってくれただろうか。

もっと色々すごい所があるけれど、 
あまり知識ばかりになってもなんだからね。

これでクジラに少しでも興味がわいてくれたなら、 
僕は嬉しいよ。

彼らも喜んでくれるだろうから。
 
さてと、やることはやったし、 
僕はこれで失礼するよ。

海の家族の所に、ひとまず帰るね。


イラスト by92

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